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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)2611号 判決 1998年5月12日

控訴人

甲野春子

右法定代理人親権者父

甲野賢三

同親権者母

甲野壽子

右訴訟代理人弁護士

土井平一

被控訴人

神戸市

右代表者市長

笹山幸俊

右訴訟代理人弁護士

岡野英雄

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人に対し、金二九二六万〇九七一円及びこれに対する平成五年九月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

三  この判決の第一項1は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、四九〇六万三一三三円及びこれに対する平成五年九月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  2につき仮執行宣言

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  当事者の主張

当事者の主張は、原判決事実摘示(原判決三頁六行目から同一七頁九行目まで)のとおりである(ただし、原判決九頁一行目の末尾の次に「あるいは同法二条」を加える。)から、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生について

1  請求原因1(一)及び同(三)の事実、及び同(二)のうち、本件事故当時、控訴人が格技室において防具等の後片付けをしていた際に、乙川の所持していた竹刀が手元から離れて控訴人の左眼を直撃した事実は、当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実と証拠(甲二、四、乙一ないし三、証人浜本信彦(ただし後記採用しない供述部分を除く。)、同乙川一郎、同佐藤隆昭、控訴人本人)と弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められ、この認定に反する証人浜本信彦の供述部分は、前掲各証拠に照らして信用できないので採用しない。

(一)  広陵中学では、平成五年九月二〇日午前九時ころから午後四時前ころまで、校庭において、全校生徒による体育祭の予行演習が行われた。午後の演習では、部活動の各部がユニホームを着用してする行進の練習も行われ、剣道部員は、防具の胴及び垂を着用してこれに参加した。予行演習の終了後、生徒はいったんそれぞれの教室に戻り、ショートタイム(ホームルーム)が行われた後解散し、各自下校するか部活動をすることになっていた。剣道部員は、同日は剣道部に格技室の使用が割り当てられていなかったため、右行進練習で使用した前記防具を、格技室内の防具棚に片付けた後、素振り等の練習をするため竹刀を持って中庭に集合するように指示されていた。

(二)  乙川は、同日午後四時ころ、右指示に従い前記防具を格技室内の防具棚に片付けたが、すぐには中庭に向かわず、同じ二年生の剣道部員である内藤某(以下「内藤」という。)と、防具棚から広陵中学の備品である竹刀と鍔を持ち出し、内藤が格技室東側の女子更衣室前付近に、乙川が内藤と向かい合う形で同室の西側の玄関ホール前付近に分かれて、竹刀をスティック代わりに、床の上に置いた鍔をパック代わりとして、竹刀の剣先を鍔の中央の穴に入れ、勢いをつけて竹刀を、アッパースイングのようにして前方に思いっきり強く振って、鍔を床上に滑らせて打ち合うホッケー遊びを始めた。

(三)  控訴人は、そのころ、前記の防具を片付けるために格技室に入り、他の剣道部員約一〇名とともに、格技室東側にある防具棚前で、防具の整理をしていたところ、ホッケー遊びをしていた乙川が、右玄関ホール前付近から控訴人の傍らにいる内藤に向かって鍔を打とうとして竹刀を強く振ったことから、右竹刀が同人の手からすっぽ抜ける形で飛び出し、その剣先部分が、約一五メートル離れた場所にいた控訴人の左眼を直撃する本件事故が発生した。

(四)  控訴人は、本件事故により、左眼球癆の傷害を受け、受傷の当日に神戸市立中央市民病院に入院し、平成五年一〇月一三日まで治療を受け、その後、平成六年一二月二九日までの間に一五日間通院治療を受けたが、左眼を失明し、義眼装着を余儀なくされた。

3  なお、被控訴人は、右2(三)の認定に関して、ホッケー遊びの態様で竹刀を振り回しても一五メートルも竹刀が飛ぶことはないと主張し、その根拠として被控訴人代理人らの実験結果を記載した報告書(乙四)を提出するが、右報告書は、実験の前提条件の正確性、信用性に疑問があり、その実験結果を直ちに採用することができず、右報告書の記載は右認定を左右するものではない。

二  被控訴人の責任について

1  請求原因2(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  前記認定事実、証拠(乙一ないし三、証人浜本信彦(ただし後記採用しない供述部分を除く。)、同乙川一郎、同佐藤隆昭、控訴人本人)と弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められ、この認定に反する証人浜本信彦の供述部分は、前掲各証拠に照らして信用できないので採用しない。

(一)  広陵中学の剣道部は、平成三年ころ創部され、本件事故当時は、部員は一年生が男子六名、女子一名、二年生が男子八名、女子九名、三年生が男子二名、女子二名の合計二八名が在籍しており、新入部員には剣道の経験のある者とない者が相半ばしていた。剣道の指導は、初段を有する浜本教諭が顧問として、これに当たっていたほか、教頭の逢坂輝信教諭も時々指導することがあった。剣道部では、授業のある日は、ほぼ毎日、授業開始前の午前七時三〇分からの早朝練習及び授業終了後午後三時三〇分ないし四時ころから同六時ころまでの二時間程度の練習が行われていた。

(二)  剣道部の練習は、主として、格技室で行われていた。格技室は、校長室や職員室等のある北棟の東側の体育館に隣接する床面積三三三平方メートルの清心館と呼ばれる建物にあり、格技室内部南側は、西に玄関ホールがあり、その東に男子更衣室、倉庫(器具庫)、女子更衣室が並び、また、東側壁面に開閉扉のついた防具棚があり、北側及び西側は壁面となっている縦横各16.3メートルの板敷きの一室である。本件事故当時、北半分を柔道部が畳を敷いて使用し、南半分を剣道部が使用していたが、格技室を使用するのは右両部だけではなく、卓球部等の他の部が使用するときは、剣道部は中庭等で練習をしていた。

(三)  浜本教諭は、主に放課後の練習に立ち会い指導をしていたが、剣道部の練習の開始から終了まで立ち会うことは少なく、途中から様子を見にくることがしばしばであり、職員会議等のため立ち会わない日もあった。浜本教諭は、練習開始時から立ち会わない場合、キャプテンの生徒に、その日の練習内容を指示し、キャプテンが部員にこれを伝えて練習を行っていた。浜本教諭は、部員に対し、竹刀の握り方や面の打ち方、防具の使い方等の技術を指導していたほか、剣道をする上での礼儀作法について、一通りの指導をしたが、それ以上に、部員が練習以外で、遊びのため竹刀や鍔を使用しないように注意することはなく、練習の開始前や終了後に部員の行動を監視するようなことはなかった。また、剣道部が使用する竹刀、鍔、防具等は、学校の備品、私物を含め格技室内の施錠されていない前記の開閉扉のついた防具棚に保管されていたが、その整理は、専ら部員の自主的な行為に委ねられていて、現実には、竹刀は十分整理されないまま横積みにされた状態に置かれていた。

(四)  剣道部では、本件事故以前から、格技室において、主として練習開始前に、他の部員がいるにもかかわらず、男子部員が竹刀や鍔を使ってホッケー遊びをしたり、竹刀を野球のバットのようにして振り回して遊ぶことがあった。乙川は、本件事故のあった年の六月に、宝塚市の五月台中学校から広陵中学校に転校してきて、剣道部に入部した生徒であるが、五月台中学校でもホッケー遊びをしたことがあり、同校の教諭からしてはいけないとの注意を受けたことはなかったものの、この遊びが多少危険であると感じてはいた。広陵中学校に転入したところ、剣道部員が同じ遊びをしていたので、同校でも同様の遊びをするようになった。乙川は、ホッケー遊びをしている最中に、浜本教諭が格技室に来たことが一、二度あるが、同教諭の姿を見てすぐに止めていたので注意を受けることはなかった。

(五)  浜本教諭は、部活動が始まる前に部員が格技室でおしゃべりをしているのを見つけると、遊ぶなと注意することがあったが、部員がホッケー遊びをしたり、竹刀を野球のバットのようにして振り回して遊んでいることに気付いたことがなく、これらの行為をしないようにと注意を与えたことはなかった。また、ホッケー遊びを周囲で見ていた他の剣道部員は、振り回した竹刀が付近の者に当たる危険性を感じることはあったが、そのために、ホッケー遊びの禁止を学校側に訴えたことはなく、また、本件事故まで、ホッケー遊びの際に竹刀が手元からすっぽ抜ける状態で飛び出したことはなかった。

(六)  本件事故当時、格技室内にいたのは、剣道部員の男女生徒約一〇名であり、浜本教諭は、三年生の副担任で、クラス担任をしていなかったため、運動会の予行演習終了後は、職員室にいたところ、乙川があわてふためいて駆け込んできたので、急きょ格技室に駆けつけて初めて本件事故が発生したことを知った。

3  そこで、前記一2で認定した事実と右認定事実に基づいて、被控訴人の責任を検討する。

(一)  被控訴人は、当日は、ショートタイムの後、第二美術室でミーティングが行われる予定であったが、部員がこれに直行せず、防具を収納するために格技室に立ち寄った際に本件事故が発生したから、部活動の顧問教諭の監督は及ばないと主張する。しかし、前記認定のとおり、控訴人や乙川が、ショートタイム終了後に防具を収納するとともに、その後に予定されていた部活動である中庭での素振りの練習に備えて竹刀を取り出すため、格技室に立ち寄った際に本件事故が発生したものであり、本件事故は、教育活動の一環として行われる部活動と密着した生活関係において発生した事故であり、このような場合にも、学校管理者たる校長や部活動の顧問教諭は、部活動に参加する生徒の安全を図る義務があることは当然であるといえるから、被控訴人の右主張は採用できない。

(二)  教育活動の一環として行われる部活動やこれと密接な関係にある生活関係において、学校管理者たる校長や指導担当教諭に、部活動に参加する生徒の安全を図る義務があることは前記のとおりである。しかしながら、部活動が、本来生徒の自主性を尊重すべきものであることに鑑みると、何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合を除いては、顧問の教諭において個々の活動に常時立会い、監視指導すべき義務までを負うものではないと解するのが相当である。

これを、本件についてみると、前記認定の事実関係に照らすと、広陵中学校においては、剣道部の部活動で使用する竹刀や鍔が、格技室の施錠されない防具棚に収納され、その整理は部員の自主的な行為に任されていたことから、本件事故が発生するまで、男子剣道部員らが、竹刀や鍔を勝手に持ち出して、格技室内において、練習の始まる前に、他の部員がいるにもかかわらず、竹刀と鍔を使ってホッケー遊びをしたり、竹刀を野球のバットのように振り回したりすることが度々あり、時にはその最中に指導教諭が来たのをみて止めることもあったこと、本件事故の加害者、被害者ともに当時、中学二年生になっていて、一般的には、危険性の認識やその回避について相応の経験、判断力が備わっているとはいえるものの、前記認定のごとき部員である生徒らの日頃の行動から見ると、それらの能力は未熟なものであるといわざるをえないことからすると、指導教諭らにおいて、平素から剣道部員らの格技室内での行動や、竹刀や鍔の使用状況に十分な注意を払っていれば、男子部員らが竹刀と鍔を使ってホッケー遊び等を行うなど、剣道用具をその本来の目的外の用途に使用していることに気付く筈であり、またそのことを十分に予測しえたものといえること、これに加え、後記のとおり竹刀それ自体危険性のない道具であるとまではいえず、防具を着用していない複数の他の部員がいる前記格技室内で、竹刀を振り回したり、強振して鍔を床上を滑走させたりすると、他の部員の身体等に対する危険が生じることも容易に予測しえたものと認められるから、本件においては、顧問教諭に本件のごとき事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能とされる特段の事情があったものというべきである。なお、これまで剣道部員らがホッケー遊びによる危険を顧問の教諭に訴えたことがなかったこと及びホッケー遊び中に、竹刀が手元からすっぽ抜けるような状態で飛び出したことがなかったことは、前記認定のとおりであるけれども、前記認定事実からして、本件事故が予測不可能な、極めて例外的かつ偶発的現象であるとまではいえないし、また他の部員がホッケー遊びを指導教諭らに申告しなかったといっても、他の部員においてそれが危険な行為ではないと思っていたからであるとまではいえないこと(乙川自身、ホッケー遊びが危険な行為であると感じながらも、顧問教諭の不在をいいことにこの遊びに興じていたことは、同人自身が供述するところである。)からして、右のごとき事情は、本件において、前記の特段の事情があったとの認定判断を左右するものではないというべきである。

そうすると、浜本教諭は、剣道部員の生徒らに対して、格技室内の防具棚から勝手に竹刀や鍔を持ち出して、これらを剣道用具としての本来の目的外の用途に使用して、他の部員らの身体等に危険を及ぼすおそれのある遊びや行為を行わないように指導し、監督すべきであり、これらの行動が、一日の授業が終了し解放感に満ちた放課後の部活動の開始前に行われやすいことに鑑みると、放課後、部活動の開始前に格技室等の練習場に赴き、部員の生徒らが、整然と部活動の準備をしているかどうか監視し、部員の生徒らがホッケー遊び等を行っているのを発見したならば、直ちにこれを中止させるとともに、以後、このような行為を厳禁することを部員全員に周知徹底し、指導教諭が差し支えがあるときには、予めキャプテンの生徒にこれを指示しておくなどの措置をとるべき義務があるというべきである。ところが、浜本教諭は、竹刀の使用方法についての技術的な指導及び礼儀作法についての一般的な注意をしていただけであり、剣道部の練習の開始から終了までを通して練習に立ち会うことは希で、練習前の格技室に赴いて部員の行動を監視することもなかったため、男子部員らが格技室において、練習の始まる前に、他の部員がいるにもかかわらず、学校の備品の竹刀と鍔を使ってホッケー遊びをしたり、竹刀を野球のバットのように振り回したりして、剣道用具をその本来の目的外の用途に使用していたことに気付かず、これらの行為を禁じる措置をとらないで、なすがままにさせていたものであることが明らかであり、これらの点において、浜本教諭に前示の注意義務を怠った過失があるというべきであり、この過失と控訴人の前記受傷との間に相当因果関係があるものというべきである。

被控訴人は、剣道がスポーツとしては最も安全な部類に属するものであり、中学二年生にもなれば、竹刀を目的外に使用してはいけないことは当然に分かっていたはずであり、竹刀を用いた悪ふざけが起こることを予測して常時監視しておくことまで要求することは過大な求めである旨主張する。ところで、剣道は、我が国の伝統的な格闘技であって、素振り練習以外の、他の部員相手に竹刀を持ってする練習(稽古)や練習試合の場合には、必ず面、胴、小手などの防具を着用することとしていること、竹刀は、衝撃を吸収するため割竹四枚を組み合わせた上、剣先を革等で丸くまとめてあるという形状をしていることから、打ったり、当てたりする限りにおいては、その危険性はさほどではないといえるが、剣先で突く場合には、その危険性は高く、特に、稽古や試合中に竹刀の竹材が折れ、その折れ口が相手の面がねのすき間から突入して顔面に怪我をさせる事故が発生していることは公知の事実であることからすると、剣道が危険性のないスポーツであるとは直ちにいうことはできない。ましてや、防具を着用していない複数の他の部員がいる前記格技室内で、竹刀を振り回したり、竹刀を強振して鍔を床の上を滑走させたりすることは、他の部員の身体に対する著しい危険を発生させる行為であるというほかない。そうして、竹刀は使い方いかんにより危険な武器と化すものであるから、学校長や指導教諭は、部員の生徒に、竹刀の使用方法について、技術的な指導を与えるだけではなく、その目的外使用を厳重に禁じる措置をとることはもちろん、本件事故の加害者、被害者ともに当時、中学二年生になっていて、一般的には、危険性の認識やその回避について相応の経験、判断力が備わっているとはいえるものの、それらの能力は未熟なものであるといわざるをえないことからすると、部員の生徒らが、部活動の行われる格技室内においてこのような目的外使用をしていないかどうか監視すべきことは、決して過大な要求ということにはならないというべきである。

4  以上のとおりであり、浜本教諭に部活動及びこれに密接に関係する生活関係において、指導監督上の注意義務違反があったというべきであるから、被控訴人は、国家賠償法一条一項に基づき、本件事故により控訴人が被った損害を賠償すべき責任がある。

三  控訴人の損害について

1  入院付添費 九万二〇〇〇円

前記認定のとおり、控訴人は、本件事故による治療のため、平成五年九月二〇日から同年一〇月一三日までの二三日間、神戸市立中央市民病院に入院したが、弁論の全趣旨によると、右入院期間中、控訴人の父母が付添看護したことが認められる。近親者の付添費は、父母合わせて一日当たり四〇〇〇円が相当であるから、入院付添費は合計九万二〇〇〇円となる。

2  入院雑費 二万三〇〇〇円

入院雑費は、一日当たり一〇〇〇円が相当であるから、その合計は二万三〇〇〇円となる。

3  逸失利益

二〇三四万五九七一円

前記認定のとおり、控訴人は、本件事故当時一三歳で、右事故により左眼を失明し、義眼装着を余儀なくされたところ、証拠(甲四ないし六、控訴人本人)と弁論の全趣旨によると、控訴人は、左眼失明により、右眼の視力も低下し、遠近識別の視覚作用が減退している事実が認められ、右傷害は、自賠法施行令別表、後遺障害等級表第八級に相当する後遺障害であると認められるから、右後遺障害による控訴人の労働能力の喪失率は、四五パーセントと認めるのが相当である。そうして、平成八年賃金センサスによれば、産業計・企業規模計・女子労働者学歴計一八歳ないし一九歳の平均年間収入は、二一〇万八七〇〇円であるところ、控訴人は、一八歳から六七歳まで就労可能と認められるから、この間の労働能力喪失による逸失利益の本件事故時における現価をホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して算出すると、二〇三四万五九七一円(一円未満切捨)となる。

計算式

2,108,700×(25.8056−4.3643)×0.45=20,345,971

4  慰謝料 合計七八〇万円

前記認定の控訴人の受傷の部位、程度、その治療経過、後遺症状、その他本件審理に現れた一切の事情を参酌すると、本件事故による控訴人の慰謝料としては、入通院分五〇万円、後遺障害分七三〇万円の合計七八〇万円をもって相当と判断する。

5  損益相殺 一五〇万円

請求原因3(六)の事実は当事者間に争いがない。

6  弁護士費用 二五〇万円

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、控訴人が被控訴人に対して、本件事故による損害として請求しうる弁護士費用は、二五〇万円が相当である。

四  結論

以上のとおりであって、控訴人の被控訴人に対する請求は、損害賠償として二九二六万〇九七一円及びこれに対する本件事故日である平成五年九月二〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は棄却すべきである。

よって、右と異なる原判決を右のとおり変更し、訴訟費用の負担につき六七条二項、六一条、六四条ただし書き、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山本矩夫 裁判官宮城雅之 裁判官奥田孝は、転補のため、署名押印することができない。裁判長裁判官山本矩夫)

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